アニマル泉

らせん階段のアニマル泉のレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
4.0
ロバート・シオドマクのフィルム・ノワール。制作はドア・シャリー、RKO 配給、白黒スタンダード。障害者や弱者ばかりを襲う連続絞殺魔に狙われたヒロインの恐怖の一夜を描く。ヒロインのヘレン(ドロシー・マクガイア)は両親を火事で亡くしたショックで発話障害がある。ヘレンがメイドで働くウォーレン家は怪しい人物ばかりだ。女主人のウォーレン老婦人(エセル・バリモア)は寝たきりでわがままばかり言って周りを困らせている。二人の息子がいて長男は亡くなった夫の連れ子のウォーレン教授(ジョージ・ブレント)、彼だけは社会的地位がある。次男は実子のスティーブン(ゴードン・オリヴァー)で仕事につかずウォーレン教授の秘書ブランチ(ロンダ・フレミング)を口説いてばかりいる。老婦人は何故か今晩事件が起きると確信しておりヘレンに逃げろと盛んに催促する。しかし雷鳴轟く嵐の夜だ。ヘレンは恋人のパリー医師(ケント・スミス)と逃げようと決意するがパリー医師に急患が入ってしまう。召使いのオーツ夫妻の夫人(エルザ・ランチェスター)はアル中で、夫(リス・ウィリアムズ)も訳ありのようである。老婦人の看護婦ベーカー(サラ・オールグッド)も融通が効かない面倒なタイプだ。
冒頭以外は大邸宅のセットドラマである。邸内には階段が二つある。一つはエントランスからの大階段で踊り場に大鏡がある。この大鏡のミラーショットが面白い。もう一つは「らせん階段」だ。タイトルバックにはこのらせん階段の真俯瞰ショットが使われている。らせん階段は地下から2階まで繋がっているのだが、このらせん階段の全貌はクライマックスまでよく判らない。これがもったいない。どちらか一つにまとめるべきだった。照明は陰影がはっきりとしたノワール調だ。犯行のたびに犯人の目のアップが示されて、さらに眼球に被害者の像が映り込む。
前半から謎めいたパーツが沢山あり、どう展開するのか期待するのだが、それらが活かされない。意味ありげに謎めいた雰囲気のわりには真相は単純だ。そもそも何故こんなに手が混む事態になるのか判らない。恋人のパリー医師も便利使いされている。これでいいのだろうか?本作は兎、ブルドック、虎や鳥の剥製など動物が頻出するが物語に絡んでくるわけでもない。
障害者や弱者への差別はフラー的だ。「裸のキッス」を想起させる。
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