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らせん階段の一人旅のレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
5.0
ロバート・シオドマク監督作。

イギリスの女性推理作家:エセル・リナ・ホワイトによる1933年発表の小説「Some Must Watch」をロバート・シオドマク監督が映画化したサスペンススリラーで、同年制作の『ブルックリン横丁』(45)で下町の主婦を好演したドロシー・マクガイアが口の利けない訳ありヒロインを力演しています。

20世紀初頭のニューイングランドを舞台に、教授のお屋敷で家政婦として働いている口の利けないヒロイン:ヘレンが、巷で発生中の障害のある女性ばかりを狙った連続殺人事件に巻き込まれていく様子を描いたスリラー映画で、ほぼ全編がヒロインの働く豪奢な屋敷を舞台に物語が繰り広げられる密室シチュエーションの作品となっています。

『暗くなるまで待って』(67)、『見えない恐怖』(71)、『ミュート・ウィットネス』(95)、『小さな目撃者』(99)、近作では『RUN/ラン』(20)のように、“障害者のヒロイン”と犯人の対峙を描いたスリラー映画となっていて、教授、義母、息子、家政婦、秘書、医者…と限られた登場人物たちの中から真犯人を予想するミステリー劇としても愉しめる娯楽作となっています。

そして、幼少期に両親を火事で亡くしたショックから口が利けなくなったヒロインが、謎に包まれた連続殺人鬼との直接的な対峙を通じて自身の記憶の奥底に封じ込めてきた深刻なトラウマを克服していく、ヒロインの“再起ドラマ”にも見入ることができる作品で、画面に度々映し出される犯人の眼元のクロースアップが不気味な恐怖感覚を現出しています。
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