ぽん

らせん階段のぽんのレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
3.5
美女が殺人鬼に追われるクラシカルなスリラーですが、本作の場合、狙われるのが障がい者の女性ばかり、という胸クソ案件。その思考の方が不健康だろうに。
ヒロインのドロシー・マクガイアは緘黙症のため、この病み腐った殺人鬼に狙われてしまいます。
だだっ広いお屋敷、どの扉がどの部屋?え、どこから階段に繋がってるの?と摩訶不思議な間取りで、逃げるヒロイン、追う犯人のサスペンスが盛り上がります。
頼りになりそうな恋人や警官が肝心なときに役に立たないとか、怪しげな人物がおいおいどこから出てくると神出鬼没だったりだとか、様々な仕掛けで畳みかけてくるのでドキドキしっぱなし。
なかなか楽しめました。


(ここからは少しネタバレ)

日本でも障がい者施設の入居者が殺される事件がありましたが、人間の命を優性と劣性に区別する下劣な思想があるのですよね。人はなぜ差別をするのか。色々と理由はあるだろうが、一つにはその人自身が何かコンプレックスを持っていて、自分の劣等感を克服するために誰かを見下す、みたいなことはありそう。
で、本作の真犯人もそういう事なんですよね。アメリカのマッチョ神話というか、男は強くあらねばならない、みたいなプレッシャーでメンタル歪んじゃう男性はいるんじゃないかと思う。最近話題になっているインセルもこの辺の病理と重なる気が。
最後に立ち上がるのがあの方というのもアンチテーゼだと思いました。
ぽん

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