マヒロ

らせん階段のマヒロのレビュー・感想・評価

らせん階段(1946年製作の映画)
3.5
(2024.19)
ある田舎町で、身体に障害を持った女性ばかりを狙った連続殺人事件が起きる。富豪の屋敷でメイドとして働くヘレン(ドロシー・マクガイア)は過去のトラウマから口がきけなくなっており、犯人の標的にされるのではないかと心配した屋敷の主人ウォーレン夫人(エセル・バリモア)から町を離れて身を隠すように言いつけられる。外では嵐が吹き荒れる中、恋人のパリー医師と共に町を出るための準備をしていたところ、屋敷内で事件が起きる……と言うお話。

『殺人者』『幻の女』のロバート・シオドマク監督で、これらと同じようにノワールかと思っていたらどちらかというとサイコスリラーみのある作品だった。
障害のある女性だけを標的にするという犯人はそれだけで気味が悪いし、最初の登場シーンでもクローゼットの中からターゲットを狙う目玉だけがギョロリと睨みつけているという気持ち悪さで、終盤まで姿を現さないことで却って常に物語の外側からこちらを覗き込んでいるかのように感じられた。

主人公であるヘレン以外はどうにも信用ならない一面があり、だれが犯人でもおかしくないというのも怖いところ。ヘレンには優しいウォーレン夫人も他のメイドを異様に嫌ってキツく当たるし、恋人のパリー医師も頼れるお医者さんかと思ったら途中でモラハラじみた態度を見せたりと、味方だから清廉潔白な人物ではない。屋敷にいるウォーレン夫人の二人の息子や、わざわざ危険を告げにきた警官なども腹の中が読めない感じがあり、どこから魔の手が忍び寄るのか最後までわからなかった。
一応ハッピーエンドを迎えはするが、とてもそうは見えない悲壮感あふれるラストカットにも何か含みを感じさせられて、事件は解決したけどヘレンはこの先幸せにはなれないのかも……という嫌な予感を残して映画が終わってしまうのがジワジワと怖い。単なるスリラーに収まらない、性差別のようなテーマも含んだ社会派な匂いも漂わせる佳作だった。
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