菊

レイディオの菊のレビュー・感想・評価

レイディオ(2020年製作の映画)
3.5
あらすじの「自分とは違う世界で生きている」という部分を、彼女に対する劣等感だろうと曲解していた。蓋を開けてみると、想像以上にピュアなストーリー。さらに、次の台詞を言い当てることができるほどお決まりの展開である。これは貶し文句ではない。何万回と消費されてきたような筋書きをなぞっているからこそ、ラジオを通じたつながりが色鮮やかに感じられた。

自分が自分だけのために、ひそかに蒔き続けていた種。それが思いもよらぬ場所で花を咲かせ、めぐりめぐって果実が還ってくる。本作のようなわかりやすい奇跡は、そう容易く起こるものではない。しかし、自分の何気ない行動に、どこかの誰かが勝手に希望を見出している可能性も捨てきれない。他者との関わりの中で生きることについて、浪漫を駆り立てられる作品だった。
菊