カナグ

炎のデス・ポリスのカナグのネタバレレビュー・内容・結末

炎のデス・ポリス(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『炎のデス・ポリス』(原題:COP SHOP)

バカオモロいが!?

ジェラルド・バトラーとフランク・グリロに釣られて初日に鑑賞。

なんだこの邦題!?と正気を疑ったが、終えてみればなるほどおっしゃる通りだと納得した。これはマジに『炎のデス・ポリス』だった。
舞台は小さな警察署と狭いが、読み・騙し合いとアクションの緩急、緊迫感を越えて迎えたエンディングの開放感が気持ちよかった。

煽り文句が「どいつもこいつもゲス野郎」ということで、きっと警官以外全員ヤバめの人なんだなという予想はまあ、外れはしなかった。ゲス野郎に違いはない。

今回のバトラーは殺し屋で主演なので、銃弾が飛び交い、人を山ほど殴りつつ話が展開するのかと想像していたが、意外にも堅実にストーリーが進んでいく。
もっとマッドなタイプの殺し屋かと思えば話は通じるしなんなら忠告もしてくれる。
若干の火力の足りなさは感じるものの、ナイフが貫通した自分の掌ごと相手を刺したり、汚職警官へ襲いかかり躊躇なく急所を撃つ容赦のない姿を見れて満足。

詐欺師・テディ役のグリロは珍しくロングヘア。短髪の彼しか知らないので新鮮さがあり、前に垂れた髪を耳に掛けるところにグッと来た(は?)。
ともかく、どう見ても悪人なのに自分可愛さだけは誰よりもある。生き延びる為にはあらゆる方便を使い、丸め込む。顔がいいからって自分は騙されないぞ!と意気込んでいたが、その場にいたのが殺人犯と詐欺師だったらまだ後者のがマシかな。ちょっと可哀想だし。と思ってしまうその隙を狙われたのだろうか。
ただの詐欺師の割には銃器に慣れた手付きで、まあ案の定、人を殺すことに躊躇ないタイプの奴だった。でもそれでいい。そういうのが好き。

今作の本当のヒーローで功労者は、警官のヴァレリー。彼女はユーモアもありながら賢く、人一倍正義感のある警官だ。
アンソニーの急襲に対応し跳弾が当たり重症、同僚は全滅、生存していた1人は裏切り者で助けは望み薄。唯一の道は目の前の狂人たちを解放すること。
並外れた精神がなければ早々に諦めてしまうような状況だが、まだ安全そうなテディ(どうせ裏切るが)に愛用の銃を託す判断力。後にボブに諭され、彼も檻から出し最終的に逃走を許すが、応急処置された救急車を拝借する。
警官の内部にも手先が巣食っており、信じられるのは自分自身のみ。「(このことは)忘れろ」と告げたボブの罪をなかったことにせず追いかける、彼らと対称的に正しく警察官である姿がかっこよかった。


個人的にちょっと笑ってしまったのが、アンソニーを指して「That is psychopath」と大変分かりやすい英語で話すボブと、もうひとつ。
ヒューバーとアンソニーが拘置所の裏側、更衣室から侵入を試みようと壁をハンマーで壊しているシーンだ。
ヒューバーは必死に壁を叩いているが、アンソニーはひとりベンチに寝そべり雑誌を読んでいる。
お前も手伝えよ!と言う彼に対して「ハンマーはひとつしかない」と言い、見ていた雑誌を開いてみせる。
そこに映っていたのはクリス・ヘムズワースとその家族。バカンス中のひとときが載せられていた。
男ならこうなりたいよな?と彼の筋肉を讃え、そしてお前には運動が必要だ、丁度ハンマーを持っているじゃないか。ソーのようにハンマーを振り回せ!と皮肉を言うのだが、ここで彼の名前を聞くとは思いもよらなかったので、先日ラブアンドサンダーを観たばかりなのもあり思わずニヤついてしまった。
俳優的な話でいいなら、その壁の向こうにいる人もMCUヴィランですよ!と意味不明な共通点にひとりで興奮していた。映画に集中しろ。

観終えた後、久々にカラッとした気分になれたのでこれはいい映画だ。本当に楽しかった。かなり好き。
カナグ

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