ろく

あんにょん由美香のろくのレビュー・感想・評価

あんにょん由美香(2009年製作の映画)
2.5
林由美香という女優を追いかけたかったのは解る。評論家の柳下が「最後の映画女優」だといい早逝した彼女をなんとかフィルムに収めたかったんだろう。ただそれが自分たちを慰める行為でしかないのではと観ていて思ってしまった。

ここにあるのは一人の女性を祀り上げて「自分たちの居場所」を守ろうとする非常にホモソーシャルな行為ではないかな。いやそもそもホモソーシャルなんか卑弥呼、クレオパトラ、ジャンヌダルクと祀り上げておきながら「その人の人格は無視」ってシステムがあるんだよ。でもその「祀り上げられた人」はどうなる。今回は故人かもしれないけど、彼女は「利用」されているだけではないかとついつい思ってしまった。

だって林由美香の言葉がないんだもん。言葉なんかいくらでも持ってこれるはずなんだ。でもここにあるのはひたすらに周りの言語。そしてうすら笑い。ああ、これは男性社会をつなぎとめるために「犠牲」なんではないかな。

そもそも林由美香自身が自分を語らなかったのは。それは「言っても仕方ないから」。誰とでも仲良くできるひとがある意味、「自分をだせず」「周りとあわせ」「気持ちは孤独に」なるのではないかと思い暗澹とした気分になった。いやそれは僕の考えすぎかもしれない。でもそう思ってしまいその先に孤独な死が待っていたとしたらそれはほんとに厳しい。

女性を自分たちをつなぎとめる「対象」としか考えないことに僕は反対である。崇め奉って孤独化させるのと、無視や加害で「犠牲者」にするのは同型だと思っている。どちらも「対象」でしかなく「個人」ではない。
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