似太郎

あんにょん由美香の似太郎のレビュー・感想・評価

あんにょん由美香(2009年製作の映画)
4.7
【射精のための準備】

AV女優の林由美香に思い入れが無ければ完全にチンプンカンプンな内容で、単なる「作り手の思い入れ過多なドキュメンタリー映画」とも言える。いわゆる【一見さんお断り】作品。

構成に向井康介が参加した事でオナニーとアートの中道を行く雰囲気が強い。AV業界内幕ものとしてはすごくよく出来ている。韓国人と日本人とのカルチャーギャップで笑わせる松江哲明のギャグセンスは相当なもの。

今や伝説となったAV作品『由美香』を始め、林由美香出演作品を検証しながらお隣の国の韓国のVシネにまで波及する【ユミカ・パワー】を劇中からひしひしと感じる事ができる。キモい男性キャラがいっぱい出てくる辺りが松江節で、やはり彼はAV畑の人である。

監督である松江哲明本人の「妄想の具現化」がジワジワ行われるファナティックな内容となっており、由美香への思い入れの強さ故に(なぜか)エンターテイメントへと昇華する演出と構成の巧みさが光る作品。胸躍る初恋ドキュメントの傑作。

スコアを担当した豊田道倫のギター弾き語りも素気ない味わいがあり、低予算ながら誰もが笑って楽しめるオナ・ドキュに仕上がっている。

この世には松江当人の行き過ぎた自意顕示欲が笑って許せる人と、そうでない人の二種類が存在するみたいだが私の場合は前者で脱力感を極めた原一男(?)みたいなユル〜いテイストがクセになる。至極、出鱈目なエンターテイメントとして評価したい一作。
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