くるみ

シングルマンのくるみのネタバレレビュー・内容・結末

シングルマン(2009年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

劇場公開以来の鑑賞でした。『キングスマン』の余波&ニコラス・ホルト祭りです。ホルトくんを初めて見たのはこの映画だったなー。

主人公の希死念慮はそのまま世界への呪いだと思いました。ゲイの自分が受け入れられない世間を憎み、周囲にシェルターを作って自分たちだけ生き残ろうとする同僚に嫉妬します。
だから、彼の希死念慮は自分勝手なところもあると作り手は表現していきます。「ネクタイはウィンザーノットで」という書き残しは、死を過剰に甘美に飾り立てている証拠でしょう。親友のチャーリーに心のうちを明かさないのもひどかった。主人公が孤独なのは、恋人と死に別れたからでもゲイだからでもなく、心の有り様が閉じているからなんだと思う。

それでも、主人公の世界はときどきあたたかく色付きます。教え子ケリーとの交流、行きずりの若者に思いを寄せられること、小さな女の子の不安を解消すること。世界を呪わなければ、祝福はちゃんと返ってくる。
私は、二人で飼っていた犬と同じ犬種を撫でているシーンがぐっと来ました。この子は大事なあの子ではないけれど、いなくなった哀しみよりもまた出会えた喜びのほうを大きく感じてたから。

ゆえに死に切れない主人公は、ケリーがすべてを知ったと察し、寄り添いあう喜びを思い出して死ぬことを思いとどまります。生きてさえいれば、孤独ではない瞬間もあるのだから。
でも、死とは逃げでも救いでもなく、思い通りにならない理不尽なもの。死を願った罰のように、主人公を心臓発作が襲います。死こそ絶対の孤独である。だから、今際の際にやってきた恋人の幻も去っていき、彼はシングルマンになったのでしょう。
20150913
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