少女漫画は感情描写が多く、登場人物に入りこまないと読み解けない濃縮した作りになっている。それを120分以内にまとめあげるために少女漫画原作モノは本筋の展開が速くなりがちである。
本作はそのなかでもとくに速く、本来十話程度ある連ドラの「総集編」をみているようだった。
主人公は数年間も虐げられてきた過去があるが、急速に成長し、あっけなく解決する。その後も簡単に落ち込み、すぐに回復する、を繰り返す。
もう一人の主人公の彼も交換日記の質問に思いのほかダメージを喰らって、身勝手につれなくなったかと思えば、身近なアイテムであるはずのスマホにあった彼女との写真・コメントをみて復活。彼女のもとへ走りだす。
大体は一回程度のきっかけで感情の転変が繰り広げられる。
つまり「ドラマ」はないのに、「盛り上がり」だけがあるのだ。
ラウールさんの美しい顔さえ写っていればいいわけで、余計な行動原理を描く必要はない。カメラもやたらと彼のアップが多かった。
よって、ラウールさんを特別に好きでない人にとっては、「映画をみる」という楽しみは少し叶えられにくい。おまけに彼の演技は一目で練習が足りていないことがわかるレベル。感情を表に出さない時の顔が何パターンもあるため、心のなかで「ちゃんと固めてこいよ」と何度もツッコミを入れていた。