ワンコ

ハッピー・バースデー 家族のいる時間のワンコのレビュー・感想・評価

4.0
【家族のこと】

騒々しく、カメラのアングルはどんどん変わる。
だが、これは小津安二郎へのオマージュだと、僕は思う。

映画を制作しているというロマンが、小津安二郎の話題を持ち出すこともそうだが、やはり、家族の関係がテーマになっているからだ。

そう、小津安二郎の描いた日本の家族に対して、フランスの現代の家族像だ。

映画は見ての通りだ。

あれが、フランスの典型的な家族だとは思わない。
しかし、そこかしこに、きっとあるであろう家族の関係や問題を映画に散りばめているのだ。

戦後とは異なり、日本も欧米化して個人主義的なところが増えたと考えると、多かれ少なかれ、大なり小なり、こうした家族の関係や問題は、僕達にもあるのではないか。

主要な家族の一人ひとりのバックグラウンドを伺い知りながら、ロマンは…、ヴァンサンは…、ラミは…、こう考えるだろうなとか、クレールは…このように行動するだろうなとか、そして、翻弄されることなしに落ち着いて行動しているように見えるカトリーヌ・ドヌーヴ演じるアンドレアの気持ちを考えながら、僕達は、映画を眺めることになる。

しかし。この作品は、結論を示さず、僕達に考える余地を与え、想像力を要求する構成にもなっている。

なぜなら、それが、家族が続いていくということだからだ。
考え続けると言うことだからだ。

好き嫌いは別にして、そういう余韻が残る作品だ。

僕は好きな作品だ。
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