まぬままおま

the believers ビリーバーズのまぬままおまのレビュー・感想・評価

the believers ビリーバーズ(2020年製作の映画)
4.0
#01 ドとレとミとファとソとラとシの音がでない
#02 彼女
#03 シティポップ
#04 終電後の世界
の4エピソードが緩やかにつながる物語。東京の恋物語。
パンフレットの監督のインタビューに書いてあったが、「ある日突然発見された、十数年前に作られた自主映画」、「それを適当に切り貼りしてつなげたらこうなりました」といった作品。本当にそう。

終曲の合田口洸さんの“ghost in the”がこの作品を体現している気がする。登場人物に固有名詞は付与されるのだが、あくまで記号であり、彼ら彼女らはトーキョーという都市に漂う名もなきゴーストなのである。そんなゴーストたちが性/愛によって傷つき傷つけられる。ゴーストだから成長もない、社会も変えられない。どうしようもない物語である。
だけどゴーストは祈っている。「今を生きること」を祈っている。実存をかけて祈っているから病むし、執着するし、エゴイスティックにもなってしまうのだけど。beliversとはこの祈りに近い信じることをちゃんと抱えている人なのだと思う。私はこういった人が好きだ。
ghostは幽霊という意味の他にかすかな痕跡、わずかな可能性、弱体化したものもあるそう。
私はゴーストではあるけれど個別具体的な“the” beliversが内に秘める祈りーその祈りの実現可能性はわずかだし、可傷性を多分に帯びているーの痕跡を掬い取れるようになりたい。

蛇足・映画技術表現
各々のエピソードの時間幅は1年、5年、1日、終電から夜明けまでと違うのだが、それを映画の特性よろしく編集によってうまく繋げてある。すごい。
#2で遥子のことが忘れられない双葉は、遥子の写真を壁に貼っている。その写真はLサイズのものを複数使って大きくしたものなのだが、それを目の部分をくりぬいたりと剥がすシーンが美しいと思った。