みーちゃん

オクトパスの神秘: 海の賢者は語るのみーちゃんのレビュー・感想・評価

4.2
娘と鑑賞。信じられない映像の数々だった。

あの地形が生み出す、海中の神秘、マダコの知能の高さや生態だけでも、驚きと畏敬の念の連続だが、"彼女"としてフォーカスしたドラマに胸を打たれた。

特に心を揺さぶられたのは、中盤でサメに足を食いちぎられた危機。私は、彼女が人間との距離を縮めたことによる行動変容で、生命のリスクが高まったと思う。当然ながら人間と仲良くなったり、撮影される事によるメリットがタコ側には全く無い。

だからサメに襲われる場面に立ち会い撮影するならば、私は守って欲しかった。サメを攻撃まではしなくても、せめて追い払うくらいの防御はしていいと思う。

それをしない理由が、自然の生態系を壊さないため的なナレーションだったが、それなら身体に貼り付けて海面まで上がらせたり、巣から出てこさせたり、人間よがりの行為に矛盾や怒りを感じた。

ところが当事者である彼女には、他責の思考が無いように見えて驚いた。人間じゃないから当たり前かもしれないけど、目から鱗だった。しかも、その上で、この関係を続けてくれるだなんて想像もつかない。個体としての生きる意味や、種としての存在意義について、レベル違いの感銘を受けた。

この世に、訳も分からず産み落とされ、あんなに過酷で孤独な世界を生き、それでも未知なる他者の存在を受け入れて、誰にも迷惑をかけず、ただただ、自分の生涯を全うする。究極の自立した姿に、胸を突かれる想いがした。