"子供に家を与えたし、暴力も振るっていない"
"それは、最低限のことだろ…"
アメリカでの成功を掴み、誰もが羨むような家庭を作り上げたローリーは、更なる成功を目指し、ロンドンに渡る。
ローリーの妻アリソンは、ロンドンへの移住に難色を示すも、自信満々のローリーの言葉に渋々従うことに…
ロンドン郊外に豪邸を借り、子供達は一流校への転校…馬や車全て一流のモノを揃えるローリー…
"それは本当に家族のため?"
建築途中で工事が止まったままの馬小屋を訝しむアリソンが知ったのは、支払いが滞っている事…更に貯蓄が底を突いている事も知る…
しかし、ローリーは変わらず大きな夢を語り…アリソンの苛立ちは、子供達にも伝染し…家族が…徐々に狂い出す…
オープニングから何処か音程が外れているような不安定なスコアが響き渡り、順風満帆であった家族が崩れていく様が静かに、そして不気味に描かれていく家庭崩壊の心理スリラーといった趣き…
ジュード・ロウ演じるローリーは、野心家で虚栄心が強く、根拠なき自信家…それは意外と現実でもよく見るタイプではないかと思います。
まぁ、一緒に働きたいかといえば、ちょっと遠慮したくなる嫌なヤツ。
キャリー・クーン演じる妻アリソンは、夫が大きな野心を持ち、夢を語れば語る程、夫との距離を感じ、やがてあらわになる現実に驚愕し、夫に対して絶望し、その絶望から夫を突き放すようになっていく。
夫婦間の嫌〜な空気をまざまざと見せられ、どーんと残る湿度と重さが、いつまでもいつまでも心に留まり、実に嫌〜な感じを持たせる作品なのです。
この嫌〜な感じって、案外どの家庭にもあるような…上手くいってる時は気になりませんが、少しでも不安材料が表面化すると、たちまちその関係性は悪化の一途を辿ってしまい、どうしようもないところまで行ってしまう。
派手な展開がある訳ではないのですが、どうにも身につまされてしまうのは、私もローリーと同じようなどうしようもない男の一人だからなのでしょうか?
あ〜、重たい重たい…