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シカゴ7裁判のなおのレビュー・感想・評価

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)
4.2
600本の節目ということで、何かこう、キッチリとした雰囲気の作品を見たいな~、と思い以前からNetflixの「お気に入り」に塩漬けになっていた本作をチョイス。

時は1968年、当時のアメリカ合衆国内ではベトナム戦争に端を発する反戦意識が高まっており、数千人規模のデモ行進が行われていた。
日々高まり続ける市民の反戦意識と、それを弾圧しようとする政府との軋轢はやがて、衝撃的なドラマを巻き起こす7人の男たちを生み出した。

「シカゴ・セブン(Chicago Seven)」。
法の下の「平等」と「正義」を信じ、言われなき罪と戦い続けた男たちの激動の瞬間を描く。

✏️異議あり!!!
”自由の国”アメリカが辿ってきた、陰鬱で血生臭い「市民vs政府」の闘争という時代背景をバックに、小気味の良いテンポで繰り広げられる法廷ドラマは圧巻。
130分という映画としては中程度の尺ながら、それ以上に鑑賞時間が短く感じてしまった。

1960年代当時のアメリカを象徴する(?)、腐敗しきった政府と司法制度。
ゲーム「逆転裁判」ならば即ゲームオーバー不可避の超絶不利な状況の中、7人(正確には8人だけれど)の男たちの無罪を信じ戦い続けたクンスラー弁護士、そして彼を演じたマーク・ライランスの演技力も光る。

1960年代当時の凄惨な世相を描くため、当時撮影されたのだろう実際の映像を要所要所でカットインさせる手法はお見事。
役者やその他大勢のエキストラが演じるフィクションのドラマ場面に突如ノンフィクションの白黒映像を降り挟むことで、本作が「架空のできごと」ではなく「かつて本当にあったできごと」として、観客に強烈に印象付けることに成功。

作品中には思わず胸糞が悪くなる場面も多々(ボビーが法廷で猿ぐつわをさせられる、デモ隊との衝突場面で女性が強姦されそうになるetc...)あり、人によっては鑑賞に細心の注意を要するが、これもまた「極上のリアリティ」演出に一役買っている。

物語の本筋とは関係ないけれど、クスッと笑える会話劇(まあそのほとんどが判事への悪態だけど…)もあったりして、ただ暗いだけの映画、に終わっていないのも個人的には高評価の理由のひとつ。

☑️まとめ
史実通り、最後には7人、途中で裁判から外れたボビーも含めた8人が「無罪」の判決を勝ち取ったことを示し物語は幕を閉じる。

多少脚色されていることもあるだろうが、あのどこまでも人でなしの判事の存在のおかげでカタルシスも十分に感じられたし、スカッとした気分を味わいたい人にもオススメできそう。

シカゴ・セブンの実際の歴史を知らずとも、むしろ知らない人にこそ、アメリカにはこのような歴史があったことを、素晴らしい法廷ドラマとともに実感してほしい。

<作品スコア>
😂笑 い:★★★★☆
😲驚 き:★★★★☆
🥲感 動:★★★★☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★★★★

🎬2023年鑑賞数:92(43)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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