ヒノモト

サン・セバスチャンへ、ようこそのヒノモトのレビュー・感想・評価

3.9
もう日本で公開されないのかと思ったウディ・アレン監督2020年の作品。

かつて映画を教えていたモート・リフキンは、小説を執筆中。映画の広報の仕事をする妻のスーに同行し、サン・セバスチャン映画祭に参加するが、フランス人監督フィリップとの浮気を心配する一方、診察を担当した美人の医師に恋心を抱き始めるというお話。

恋愛感情がこじれていく様がウディ・アレン監督らしく軽やかな語り口で進行する内容ですが、この心情描写として主人公のモートが愛するクラシック映画の場面が物語に浸食していくのが、今作ならではの魅力になっています。

初見ですべての映画の場面を判別できた訳ではないですが、単なるオマージュに収まらない愛すべき映画そのものが人生の縮図であり、哲学的な問題をはらみつつ、死の影までもコメディに償還していくところに、語り口の鮮やかさを感じます。

もう完成している次回作は、早めに公開されることを祈ります。
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