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シャドウ・イン・クラウドのpenのネタバレレビュー・内容・結末

シャドウ・イン・クラウド(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

脚本が共同名義になっているが、実際のところ完成した作品はマックス・ランディスが書いた部分は僅かで、ロザンヌ・リァン監督が大幅に書き直したらしい。インタビューサイト読んだら元の稿は70ページ未満のものだったらしい。逆にどんな内容だったのか気になる。

モード・ギャレットが乗り込んだ飛行機に日本軍の零戦とグレムリン(比喩でも何でなくモンスター。今時珍しいくらいにストレートなデザイン)がほぼ同時のタイミングで襲いかかる、という危機的状況とその打破をかなり丁寧に描いている。丁寧といっても様々なことに理由付けする訳ではなく(結局あのグレムリン何だったんだ)、破壊の賑やかさと爽快感を前面に推し出した演出が丁寧。リアリティライン云々は完全に放棄されているが、意図してのことだと分かる。

戦闘機に乗り込むギャレットに元々の乗組員である男たちはひどい言葉(彼らはジョークと思っているような醜悪な内容)を平気で投げかけ、下に見る態度・言動を繰り返す。ギャレットは狭い銃座の中に押し込まれ、聞こえてくる無線は酷いものだ。そしてそんな物理的な状況が、次第に明らかになっていくギャレット自身がこれまで経験してきたことと、その為に受けた傷と重なり合う(ここでギャレットが最初に負傷した状態で現れたことを思い出す)。人物の背景が作中の主人公の現在の状況と紐付き合っていく過程はストレートな気もするが、クロエ・グレース・モレッツの一人芝居によって深い印象を残していたように思う。

主人公の背景は監督が書き直した脚本の大きな部分なんだろうか。以上の主人公を取り巻く深刻な状況と、そして先に書いたふっとんだ危機的状況、この2つをどちらも丁寧に1本の中でやろうとする姿勢に驚いた。その分主人公まわりの登場人物たちの掘り下げは無い。ただ不要な部分としてバサッと切ってるんだろうなとも思う(男たちの印象は顔より無線越しの下卑た声だ)。

監督はこれが長編デビュー作らしく、次回作が気になる一人として名前を覚えた。何ならまたこの監督主演コンビで観てみたい気もする。
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