きこ

天外者のきこのレビュー・感想・評価

天外者(2020年製作の映画)
4.8
幕末から明治維新は歴史好きな人達の間で人気の高い時代ですが、この「天外者」はこれまで殆ど知られることのなかった五代友厚の半生を描いた物語です。出来事は史実に沿っていますが、ストーリーはオリジナル脚本で描かれているため、全く新しい幕末から維新の物語と言えると思います。歴史が好きな方もそうでない方も楽しめる作品になっています。私は織田作之助さんの小説「五代友厚」を読んでから観たのですが、新たな偉人像は期待以上でした。
薩摩藩士五代才助と時代を代表する坂本龍馬、岩崎弥太郎、伊藤博文。志を持ったこの若き4人が絡み合い繋がって未来を切り拓いていく。
時代背景の描写は細かくはありませんが、逆に出来事中心ではないから面白い。
五代が自分の想い描く未来のために、信じた道を覚悟を持って全うしていく姿とその人間模様が心情豊かに描かれていて、観る者を物語の中に引き込みます。
エピソードの一つひとつ。ナレーションの一つひとつ。それらが驚きと感動の美しいラストシーンに繋がり、すべて納得させられます。報われた、と思いました。
五代の生き様を三浦春馬さんが渾身の演技と圧倒的な存在感で表現しています。何度も何度も心を揺さぶられます。
意外に思えた共演者のキャスティングも作品を観れば見事にマッチしており、魅力的なキャラクターとなってそれぞれがいきいきと輝いています。
英語で語られるナレーション(字幕あり)も印象深く、映像の美しさと音楽の世界観、小道具や衣装なども細部まで拘りを感じました。 
心に残るシーン、誰かと語り合いたくなるシーンがたくさんあります。時代が変わっても変わらない大切なものがある。観終わった後に人と人との繋がりの大切さや未来に繋がる温かな希望の様なものを感じさせてくれる作品です。
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