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天外者のakuruのレビュー・感想・評価

天外者(2020年製作の映画)
4.0
 三浦春馬という役者は、いろんなものに化けられる。キラキラした高校生。ダサいサラリーマン。難病に侵されている青年。韓流ドラマで父親役もやった。きっと、デビュー作だった朝ドラにだってまた出れたはずの俳優だし。舞台だって、ドラァッグクイーンやって圧倒的な存在感を放ってた。いろんなあなたを見たかった。これからだった。すべて。

三浦春馬、享年30。五代友厚、享年49。

 2人ともこれからだったはず。日本の将来を、1番いい景色を見れたはずなのに。
 
 五代友厚の葬儀で、大阪の町は止まったところで、映画は終わる。日本から嫌われ、憎まれ、追いかけ回された男の死を大阪の商売人は忙しく働く手を止めて、泣いた。春馬はどうだっただろう。同じではないか?日本のエンタメ界が彼の死を悲しみ、こうして半年経ったのに、まだスクリーンで彼は生きて笑ってる。それを見ながら、観客は涙が止まらないのだ。

 秒速で巻いて巻いて話が展開するし、五代友厚の人生を2時間でまとめるなんてとても無理。で、なんの話やねん?で、今五代はどこにいるんだ?と度々思う。それでも、この大変すぎた2020年の年末に感傷的になるには、彼の死を追悼するにはあまりにぴったりすぎて、泣けてくる。

 天外者="すごい才能の持ち主"。

 「勇敢に戦って敗れた国はまた起き上がれるが、逃げ出した国に未来はない」
 
 友厚のこの言葉が頭から離れない。2020年は世界が変わった大変な年だった。みんな大変だった。でも、生きなければならない。逃げ出してはならない。友厚が乗り移った春馬がそういってるから。

 三浦春馬という「天外者」に出会えた奇跡。ようやく、大変すぎた1年が終わる。

 「私はただ夢のある未来が欲しいだけだ」
 
 私は、あなたの未来がとても、見たかったです。きっとキラキラしてたはずだから。
 
ありがとう。良いお年を。
ゆっくり、おやすみ。
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