骨折り損

いつかの君にもわかることの骨折り損のレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
3.8
まず、主役の子どもが可愛すぎる。

これだけでもう心を奪われる。

映画としては割と淡々としている印象も受けるが、「余命宣告」という重大過ぎる出来事が主題にあるが故に、日常生活の一つ一つを切り取るだけでも、それに意味を感じてしまう。だからこそじっくり見られる映画だった。

父親が余命残り僅かであるということの説明がとても軽やかで、地味に斬新な演出だなと思った。映画の冒頭ではそのことについては直接的に触れず、父と子の生活を追っていく中で徐々に彼の置かれている状況が観客に伝えられる。この手法が意外とありそうでないバランスだなと感じた。余命宣告ってドラマ的に大きなインパクトがあるからこそ、作り手としてはそこをしっかり見せたくなるもの。しかし、今作はそこをあえて大きく見せず、最初からそれを受け入れた上での主人公達を追う。主人公の余命を受け入れているような様子から映画が始まるからこそ、生活の端々で彼の葛藤を嫌ってほど感じてしまう。それが辛い。辛いが、感情移入してしまう。

そして養子に出す親候補の人たちが、みんな微妙に不安な気持ちにさせてくれ、これまた主人公が悩む気持ちにシンクロしてしまう。

そして最後、どうしたって悲しい気持ちにならざるを得ないと思っていたが、どこか爽やかな気持ちにもなった。

この映画が何を伝えたいのか、確信を持てた瞬間だった。
骨折り損

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