ふき

シャドウ・オブ・ヴァンパイアのふきのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

一九二二年の映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』に出演していた吸血鬼役の俳優が、実は本物の吸血鬼だったら? という作品。

お話は、『吸血鬼ノスフェラトゥ』の作品内時系列に沿って進む撮影に沿って、進行する。その裏で、吸血鬼役を演じる吸血鬼はホラー展開を起こし、彼を起用した監督は作品を完成させるために奮闘するが……。
「吸血鬼」や「ドラキュラ」という存在が相対化された世界の物語であるため、役者「マックス・シュレック」には、そこに往年のドラキュラ映画のような神秘性や謎はない。あるのは、吸血鬼としてどうしようもなく背負ってしまった悲しみだ。
逆に映画監督「フリードリヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ」は、「映画を完成させる」という明確な指向のもと、あらゆる障害をものともしない。それは吸血鬼であっても、人の命であっても同じ。
映画のクライマックスで訪れる、二人の力関係の逆転は、「現代における吸血鬼とはなんなのか」を明確に示していると思う。

なお、「一九二二年のモノクロ作品が撮影からラッシュまで、二〇〇〇年のクオリティで再現される!」という期待は、抱かない方がいい。作中の描写に似たシーンはいくつかあるが(影が階段を登るとか)、再現に力を込めた作品ではない。
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