櫻イミト

シャドウ・オブ・ヴァンパイアの櫻イミトのレビュー・感想・評価

3.5
ムルナウ監督「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)に主演した吸血鬼は本物だったとするメイキング再現ホラー喜劇。

1921年、ムルナウ監督(ジョン・マルコヴィッチ)は吸血鬼映画の製作に取りかかっていた。プロデューサー(ウド・キア)が決めたキャスティングに反して、監督は吸血鬼役としてシュレック(ウィレム・デフォー)という無名の男を連れてくる。。。

ユニークな企画とクセの強い配役の時点で半ば成功している。当時の撮影セットやノスフェラトゥのメイクの再現が完璧で、ドイツ・サイレント映画好きには楽しい一本。

ムルナウ監督が完璧な演出に徹するあまり狂っていく様子は名誉棄損スレスレな感じ。個人的には終盤もっとドギツクしたほうが良さそうに思ったが、それではスラッシャー映画になってしまうかも。

本作を観ていると、現在の技術と映像論があれば古典映画の再現は容易なのだと思った。自分の場合、古典映画は当時の時代性と思想をひっくるめて楽しむものと考えていて、大層に技術論を語るのはマニアックな神格化の方便でしかないのだと再自覚した。
櫻イミト

櫻イミト