MasaichiYaguchi

そこからの光 未来の私から私へのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
この映画を観るまで「多発性硬化症」という病気の存在さえ知らなかった。
文音さん主演で、実際に多発性硬化症と診断され、薬や治療法も限られた中でリハビリに励み、同じ病気で苦しむ人々の為にNPO法人で活動している女性をモデルに映画化した本作は、或る意味、社会におけるマイノリティが存在の認知と、普通に生きることを勝ち取る為の闘いを描いたものと言えると思う。
描かれた難病はほぼ1万人に1人の割合で、それも20~30代の女性に発症することが多く、2020年で罹患者は2万人に上るらしい。
歩行困難や手足の痺れという症状が一般的らしいが、人によって様々な症状が出るので、なかなか当人ではないと病苦を分かってあげられないかもしれない。
ヒロインのぴょんちゃんこと中村翔子は病苦に挫けそうになりながらも、家族や幼馴染で親友の谷口千佳の応援やアシストを受けながら、前を向いていこうとする。
彼女はなかなか世間に理解されない患者の“駆け込み寺”的なNPO法人を立ち上げたり、海外では実績のある新薬の承認の為に奔走するが、時に周りと衝突して空回りもする。
このぴょんちゃんを等身大の共感を呼ぶキャラクターとして文音さんが演じ、その友人の千佳を江上敬子さんが、お笑いコンビ「ニッチェ」の時とは違う心に染みる演技で表現する。
目に見えない、誰でもが発症するリスクのある新型コロナウイルスが世界を席巻している今、病気や病状は違っても如何に患者に対して周りの支えが重要なのかが伝わって来ます。