ゆず

サマーフィルムにのってのゆずのネタバレレビュー・内容・結末

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「時かけ」フォロワーは嬉しいんじゃないかと思う。タイムリープはないんだけど。
昨今、"特に科学的根拠はないけどタイムリープしちゃった!"みたいな作品はとても多くて、そこに「なんで?なんで?」と引っかかってしまう私にとっては、"タイムマシンで未来から来ました"はこれ以上ない立派な根拠になる。
来た理由も時かけと重なる部分があってよかった。未来では映画文化が廃れ、5秒くらいの短い動画文化しかない。動画が氾濫している現代から地続きで想定されうる未来。むしろアニメ時かけよりも上手く処理できているのでは。

以上が個人的に刺さった部分だけど、時かけ要素を抜きにしても、青春映画として、"映画愛"映画として、魅力的なトリオが出てくる映画として申し分なかった。
映画制作が題材の映画だとか、アニメ制作をアニメで描くとか、漫画家についての漫画とか、それが作られるまでのドラマをそれ自体で表現した自己言及的な作品は何故かそれだけで面白い。
ラストシーンでは映画上映という枠を飛び越えて、ハダシがようやく向き合えた本当のラストが上映会場に立ち現れる。虚実が曖昧になり、感情の絶頂で終わりを迎える。それは劇中映画のラストであると同時に、ハダシのひと夏の青春のラストでもある。
そして私たちにとっては「サマーフィルムにのって」という現存する映画のラストである。現実と虚構を隔てる壁が消え去り、虚構の中での壁も既に消え去っていて、すべてはひとつになる。
ゆず

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