喜連川風連

サマーフィルムにのっての喜連川風連のレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
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王道なんだけど、王道じゃない漫画的青春映画。

勝新太郎を語り座頭市で盛り上がる女子高生。これだけでもおじさんは大歓喜だろうし、若者にとっても見たことのない映像体験になる。

春日太一氏が指摘するように現実の時代劇は凋落が激しく、もはや撮れる監督も、スタッフも、出演できる役者も払底している。

そうした現実とクロスオーバーするように、映画文化の衰退も一緒に語られるので、他人事には聞こえない。劇場で視聴中、後ろのお兄さんが「映画文化を守っていく!」のセリフで号泣していた。

キャラ造形がマンガ的で、勢いで押し切っているところは多々あるものの、背景美術や殺陣の作り込みがとても良い。

何より監督の青春キラキラ映画への怨念が凄まじい。

テーマは一貫して、「監督が作りたいものをどう見つけて描くか」に終始しており、怨嗟の声を向けられるライバルの女の子にも、哲学があり、彼女も彼女で撮りたいものを撮っている。

生々しい「人間」が登場するわけではないので、映画祭ウケはしないかもしれないが、映画館での鑑賞体験とは抜群に相性がいい。

SF要素が必要だったのか、ラストシーンを演劇風に見せるべきだったのか、金子大地が恋愛として監督を好きなように見えなかった等、気になる部分もあったが、ヤマ場の持ってき方含め、上手い映画。

上映中自分が作った映画の荒さに目も当てられなくなって、止めたくなる気持ちはすごいわかる。けど、それも受け入れて前に進んでいかないといつか自分に殺されちゃうよ。ハダシ監督。

自分が見たいものを撮ってなかったと気づいた時の絶望と甘酸っぱさで終わってもそれはそれで良かった。

エンディングテーマのカタルシスが大変良い。
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