Blake1757

サマーフィルムにのってのBlake1757のレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.5
予備知識ほぼゼロで「高校の映画部を題材にした青春映画(演劇部が題材の『幕が上がる』のような)」だろうと思って見始めたのだが、まったく予想もしていなかった展開で(予告編で明かされていたSF要素も知らずに見始めた)、しかも映画的なクオリティの高い作品で驚かされた。
まず冒頭のあるショットで、この作品が「視線の映画」であることが(監督によって秘かに)宣言され、それはラストシーンまで強固に一貫される。いずれの俳優の視線も(それを写し撮ったキャメラも)とてもよかった。
主人公の女子高生の造形も見事で、「時代劇好きの、(その奇特な趣味と熱量を除けば)そこらを歩いてそうな女子高生」としての表象が俳優の身体の隅々において表されていて、そこに「俳優が(あるいはアイドルやモデルが)女子高生を演じてます」といった匂いが微塵もない。ちょっと猫背でO脚気味の身体とその所作は、確実にこの人物の存在に強度を与えていたと思う。
そして、その身体性を魅力的に映しながら、そこかしこに、物語を駆動する「運動」が散りばめられ、序盤のチャンバラごっこに始まり、追い追われる二人、橋から飛びおりる二人、また追い追われる二人(その二人が唐突に正面衝突する瞬間のドラマ的な美しさ!)、そこからラストの「活劇」へとつながっていく。
「映画についての映画」という意味でのメタシネマ的なテーマを含みながらも、それらを振り切ってなお、極上のエンターテインメントとしての青春映画の傑作だった。
(*追記:DVDのオーディオコメンタリーで監督自身が俳優達に「視線を大事にしてほしい」と伝えていたとの発言があった)
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