lp

サマーフィルムにのってのlpのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.3
東京国際映画祭にて鑑賞。

特別招待作品から『サマーフィルムにのって』!今年の特別招待作品の目玉はヴェネツィアとトロントを制した『ノマドランド』で間違いないと思うけれど、その『ノマドランド』と同じか、それよりも早くチケットが完売した(上映されるハコの大きさも影響)今作。
例年、特別招待作品は近日中に日本公開が決まっているので、優先順位が恐ろしく低いのだけれども、今作は内容が気になっていたのでチケット争奪戦に参加。奇跡的にチケットが購入出来たので鑑賞することに!
期待以上に素晴らしい青春映画だった!

高校の映画部に所属する時代劇オタクの女子高生が主人公。文化祭で上映する企画案の部内コンペに破れた彼女は、仲間達と時代劇の製作に挑むことを決意する!そこに主演にピッタリの男の子も現れ・・・という話。
この導入部から中盤までは映画撮影を題材に、青春映画の王道的なプロットを今作も辿っていく。恋愛に友情、ライバルの存在と、見本市の如く一通りの青春映画の要素が詰まっている。その中に魅力的なシーンがあったり、エピソードがあったりで、ここまででも十分に楽しい。

しかし、今作の特筆すべき良かった点は、その先に待ち受ける怒濤のクライマックスからラストだ。
実は今作の冒頭で主人公の友人が「とある小説」を読んでおり、その小説から今作のラストを安易に想像してしまうのだけれども、その想像を今作のラストは軽やかに超えていく!しかも「時代劇」を使って!

正直なところ客観的に考えて今作のラストはメチャクチャであり、ともすれば安っぽくもあり、観客によっては「べき論」で考えて怒る人もいるかもしれない。
ただ、個人的には今作のラストは、青春映画特有の「自由さ」が感じられて好き。また、安易な形で終わらせようとしなかった点でも、大いに推したい。

ここまで絶賛一辺倒であるけれども、唯一残念だったのは、ラストに至るまでの人間ドラマ(具体的には仲間達と映画を撮ってる段階)に、もう少し厚みや捻りが欲しかった。話がテンポ良く進みすぎていて、特に主人公の周囲を固めるキャラクターのドラマが薄っぺらく感じてしまった。ここもクリアしていれば、年間ベスト級の作品だったのになぁ・・・という印象だ。惜しい!

2021年に劇場公開予定とのことで、気になる方はぜひ!オススメ!
lp

lp