じゅんP

激怒のじゅんPのレビュー・感想・評価

激怒(2022年製作の映画)
3.8
議事録なんて取らなくてOK、都合の悪い部分は黒塗りでOKなど、おかしいことに異を唱えず傍観者でいると、そのうち怒ることも出来なくなる、というゆでガエルの法則の行く末を誇張して描いた「みんなが見てるよ!」の世界は、徹底して傍観者不在。
許容する側と許容されない奴らだけが目に映る町では、不寛容なジャッジのもと、安心・安全判定からはみ出たやつが順番に炙り出されていく。

体制側の振るう暴力と、主人公の体現する暴力を描き分け、「嫌なやつに制裁下してスカッとする」ような安心・安全な暴力には明確に不支持を打ち出しつつ、主人公サイドが向けられた不正義に対しては、責任と代償を背負わせながら「お前たちを殺す」精神を突き立てていく辺りのバランスは考え抜かれていた。

バランスと言えば(特にバイオレンス映画が)どこかで許容されてきた、十把一絡げに露悪的な表現こそを健全とする、(映画秘宝界隈が持て囃してきてしまった)価値観への批評的視点も入っていたように感じた。

「暴力映画」でなく「暴力についての映画」として、ユーモア交えながらも至って真面目なつくり、そして冒頭の信号のシーン始め、監督が普段から著作等で発してるメッセージがそのままにパッケージされていて、”らしい”なぁと。
じゅんP

じゅんP