シュローダー

オールドのシュローダーのネタバレレビュー・内容・結末

オールド(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

映画が始まる前、シャマランが自ら映画館に来た観客に向けての謝辞を述べる映像が流れたが、その精神に偽りなく、シャマランのおもてなし精神が炸裂しまくった楽しい映画だった。全体のシチュエーションとしては、ジョジョ五部の「ザ・グレイトフル・デッド」戦を多分に連想する「30分で1年が過ぎるビーチ」に閉じ込められた人間たちの話。これだけでも充分面白いのに、「ビーチに集められたのは持病を持ってる人とその家族」というスパイスを加える事によって、地獄のような展開が連べ打ちになっていく。特に素晴らしかったのは腫瘍の除去の場面と「妊娠」から「出産」を巡る場面。特に後者の「あちゃ〜…」感はもう絶品だった。しかもそれらが5分に1個の異常事態という凄まじいペースで起こるので、退屈する暇は全くない。物語と見事に共鳴する不条理極まりない長回しとクローズアップとパンが高度に組み合わさったカメラワークも超キモくて超良かった。しかし、この映画が、シャマランが真に語りたい事柄は、人物の心理描写そのもの。このビーチが何故年を取るのが早いのかの理屈とか、治験がどうだこうだみたいな事の真相は正直どうでも良い。この映画が問題にしているのは、主人公一家の「人生」そのものである。実は離婚の危機を抱えてこのビーチにやってきた主人公夫婦。それが最終的には「老い」という現象によって解決されていく過程が濃厚に圧縮された映画だった事がだんだんとわかっていく。それを支えるのが「老眼」と「難聴」というモチーフであるが、これが夫婦の精神的和解に繋がるばかりではなく、統合失調症の医者との対決の場面できちんとサスペンスを盛り上げる道具としても使われるのが巧い辺りで感心してしまった。話の構造は「ヴィレッジ」的で、最終的なオチは「ヴィジット」と同じ姉弟の話途中に出てくる骨粗相症の女が老化のせいで骨が折れまくる場面は完全に「アンブレイカブル」な辺りもシャマランのサービス精神を感じた。「いつ終わんだよ!」と突っ込みたくなったラスト周りのグダグタさも、シャマラン映画なら可愛げとして許される。シャマラン映画というジャンルムービーとして、期待以上のものがきちんと観れたので良かった。