過ぎ去る時間が早まってしまうビーチに集められた人間たちが織りなすドラマ。集められた10人の人生を一気に追体験する。
宇多丸さんもおっしゃっていたが、これは哲学的な寓話である。
過去のケンカも大きな視点から見ればほんの些細なことでしかなく、お前にとって本当に大切なことや人は何か?と迫ってくるものがある。
黒幕を明らかにする過程でテーマが少しボヤけてしまうものの、スティーブ・ジョブズが死に際に「家族ともっと時間を過ごせばよかった」と語ったようなことを体感できる。
つまるところ、人間は最終的に死ぬし、人生をかけて成し遂げたことや作った作品も最後、兄妹が作るような砂上の楼閣のように儚く消え去るものかもしれない。
そんな人生において、大切な人と過ごす時間や、大切な人を見つけたり、自分に問いかけたりする時間がどれほど大切か。
忙しい日常の中で見過ごされてしまいがちな、「本当に大切なこと」をビーチという生きるのにかなり限られた環境で追体験できる。
ラスト、兄妹が巨大な砂上の楼閣を作って、それが波に流されながら死ぬシーンを作って終わって欲しかった感はあるものの、父と母のシーンが大変に良かった。
目が悪くなる父と耳が聴こえなくなる母。最後にはお互いがお互いを補い合いながら最期を迎える。まるで理想的な男女の在り方のように。
娯楽映画として見るか、人間ドラマとして見るかで大きく評価が変わってきそう。
ユニバーサル配給なので、娯楽向けに作らなければならない部分は多くあったものの、身の毛のよだつような、人生の追体験だった。
老いるとは、「まあいいか」と思えることが増えることなのかもしれない。
狭い空間に閉じ込め、圧縮された時間を監視してみんなで眺める体験は、まさに映画体験そのもの。それをシャマラン自身が監視員として、出演し表現してみせる皮肉。素晴らしい。