空海花

オールドの空海花のレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
4.5
M・ナイト・シャマラン最新作。
私のお休み中の優先リストNo.1作品。
シャマランが挨拶してくれたから
思わず手を振りたくなった😳👐笑

美しい海岸にあるリゾートホテル。
そのプライベートビーチで起こる不思議な現象。
そこでは時間の進行が著しく早まる。
開放感のあるビーチは密室になり
速すぎる時間が止められない恐怖を思い知る。
原案はピエール・オスカー・レヴィとフレデリック・ピーターズのグラフィック小説「Sandcastle」

時間。“時は金なり”とは、薄々とあるいは切実に誰しも感じたことがあると思うが
例えばコロナ禍で時間が止まったように感じた人もいたと思う。
“今しかできない”と思うこととのズレ
“これならできる”“今だからできる”に転換することもできるが
ズレに焦点を当てすぎると心に大きな差異が生じる。
それ以前に焦点を当てれば、“過去”に戻りたい思いが強くなり、ギャップに苦しむ。
“未来”は“今”と地続きで考えないと、思い描けない。少なくとも地に足を着けていないと、ふわふわした願望を抱え不安定になってしまう。

時間の経過は、成長と老い。
老いの恐怖は、健康と美容。
これは普遍的なテーマでもあるが、
“今”だからこそ余計に響くものがあると思う。
ツッコミは程々に、設定の妙、登場人物の描写にドラマ、驚きの展開を最初から最後までじっくりと味わってほしい。
今だからこそ観てほしいシャマランスリラー。
ネタバレ厳禁で謎のビーチに飛び込んでほしい。

素晴らしい画作りは、撮影監督マイケル・ジオラキス。
娘2人もスタッフとして参加。
サレカ・シャマランは音楽を担当し、楽曲も提供。クラシックピアニストからR&B歌手へ転向している。
イシャナ・シャマランは第2班監督。
父と共にこのビーチで撮影を行った。
立派なアーティストとして成長した娘たちと作り上げた本作は
シャマランにとっても、これまた特別なものになったに違いない。


以下ネタバレ含む感想⚠️長い😅


鑑賞前はこの謎のビーチがとにかく気になる人も多いと思う。
リゾートホテルから始まる開幕から秀逸。
ビーチへの案内人は…(笑)
そこに連れて行かれるのは3組の家族。
2組には子供が居る。
既にビーチにはラッパーの男性も。
外観は開放的なはずのビーチに閉じ込められた人々。
彼らの職業も興味深い。
物語に恐怖を与えたり、ここぞとばかりの説明に説得力もある。
彼らのことを知るに連れて
視点は登場人物に移り行く。
どこか普通とは違う人たちであることは徐々に明かされていく。
彼らがどのように変化し、行動するのか。
ビーチの謎は、彼らがなぜここに集められたかという謎にすり替わっていく。

ビーチでのイベントも盛り沢山。
手術シーンに関しては、ちょっと便利(笑)
そんな訳ない!が、おぞましさと奇妙さがあっていい感じ。
個人的に好きな姉弟設定もいい。
『ジョジョラビット』のトーマシン・マッケンジー
『ヘレディタリー/継承』のアレックス・ウルフ
キャスティングに感動すら覚える。
弟くんがこんな場所でいきなり妊娠させてしまうというのが、まさに子供と言うべきかツッコむべきか(笑)
だが彼は出産に立ち会い、子供の死を看取り、彼女も亡くし、親の死も看取るという人生のイベントを経て、最も成長を見せる。

キャスティングで何より感動なのは
2人の父役ガエル・ガルシア・ベルナルの起用。嬉しくもあり、ドラマ的にもかなり良い。
「ケンカしてたんだっけ?」
実際にはその日の日中の出来事なのに
色々忘れてしまって、今に幸せを感じる境地に至る姿には泣けた。
妻は覚えているはず。彼女の気持ちを思い、泣ける。
身体は成長したとして知識を得ているのはなぜかという問いは私はここに霧散した。
それは理由にはならないけれど、
理屈じゃない。

更に姉弟たちが歳を取った時
「この歳になっても子供心を忘れないものなの?」
この家族の台詞が沁みる。
過去今未来、人生は地続きだ。
姉弟は現実を受け止めたその先を進む。

対してもう一方の夫婦は対称的だった。
夫は今も過去もあやふやで
妻は今も未来も受け止められない。
娘が出産してるのに傍にいれないどころか、逃げだそうとしたし。
最後面白い死に方してた(笑)

私は、タイミング良く認可されたばかりの薬を使えた経験もあったり、一部情報もチェックしているので、
この結末がグサグサと心に刺さった。
治験は第1相~第4相。量を定め、安全性を確認し、比較試験に入る。
海外と日本で結果が違うこともあるし
財政面も色々と。
認可には日本は特に長い年月がかかると言われる。
登場人物に医療関係者が多かったのも
ここに理由があるかもしれない。
作品的には私的よりもっと一般的なことだろう。

アンブレイカブル三部作を終えて、
また新たな境地に入った感じ。
次回作も楽しみ😆


2021レビュー#159
2021鑑賞No.357/劇場鑑賞#59

最近スコアが好みに振れてしまう…😂
空海花

空海花