僕は結局、「シックス・センス」を初めて観た時の、あの衝撃のどんでん返しと、異常なまでに気持ちの良いあの騙された感を、ずっと追い求めている気がする。
M・ナイト・シャマラン監督には「きっと騙される」「騙されるかも知れない」と1㍉でも知ってしまっている時点で、もうあの感覚は二度と味わえないのに…。
南国のリゾート地に旅行にやって来た4人家族。ホテルのマネージャーに勧められて訪れたプライベートビーチで、それぞれが思い思いのひと時を過ごすが—— 。
このビーチ…
何 か が お か し い 。
浜辺で発見された女性の変死体。
水着が小さく感じると違和感を訴える息子。
ビーチを抜け出そうとすると襲ってくる謎の頭痛。
やがて子供達が異様な速さで成長している事で、ビーチにいる全員が気付かされる衝撃の事実。
このビーチでは、時間が速く過ぎ去っているという事に—— 。
…とここまでは、予告編を観れば十分わかる内容で、後は観てのお楽しみ。以下、核心的なネタバレには触れないまでも、未鑑賞の方の為、行間を空けます。
耳が聴こえ辛くなってしまった妻と
目が見え辛くなってしまった夫を
総合失調症が悪化して気が狂った様に襲いかかってくる医者。
只でさえ制限が課せられたシチュエーションで、更に個人個人に異なる制限を加えて生み出す恐怖感。これは上手いなぁ、と素直に監督の手腕に拍手。
とは言え、ボキボキと骨が折れていく女性は、骨粗鬆症なの?あそこまで折れまくるの?
ツッコミ所もそれなりにあるし、種明かしされたオチも個人的には「へー」ぐらいの感想しか持てず、弱い気がする。
前述した、シャマランならではのどんでん返しは今回も得る事が出来なかったんだけど、それらを差し引いても、この作品が我々に問い掛けてくるのはまた別の命題なんだと思う。
30分で1年が過ぎ去ってしまうこの場所で、あなたは何を思い、何をしますか?
状況を打開しようと、あらゆる手段を試し、奔走する。それは勿論、生きようとする者として正しい行動なんだけど、静かに波の音を聴きながら、平穏な気持ちで最期の刻を迎えた夫婦の姿が強く胸に焼き付いた。
離婚しようと心に決め、最後の家族旅行となる筈だったのに。彼らは自らの罪を素直に認め、相手に対しての憎しみを捨てた。
歳を重ねて老いるという事。
生きるという事。
死ぬという事。
最期の刻を迎える時に、あの医者の様にナイフを握るのか、この夫婦の様に互いに手を握るのか。
そんな事に想いを馳せるのも一興。
期待とは違ったけど、
これはこれで有り難く鑑賞させてもらいましたシャマラン監督。
あざっす。