じゅ

オールドのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

オールド(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

あの運転手シャマランみたいな顔してんなって思ったらシャマランだった。
カメオ出演はけっこうやってるんだ。シャマランの顔知ったの最近だから全然気付かんかった。


アナマリアリゾートホテルの支配人が特別に通してくれた自然保護区のビーチが、浜辺を囲う岩壁を構成する特殊な鉱石の影響により細胞を活性化させられて見かけ上異常に時間が速く進む場所でした、と。
ホテルに出資する製薬会社が実は新薬の治験のためにビーチを使っていて、病気持ちの宿泊客にこっそり新薬を投与してビーチに放り込んで1日にして一生分の経過を観察してたんだと。

凄すぎ。どんな世界を見てきたらそんなあらすじ思い浮かぶんだ。


一度入ってしまったら、出ようとすると鉱石が放出する何だかの何かしらの変化に耐えられなくなって気絶するんだとかなんとか。要は一度入ったら出られない。イメージ的には『メイドインアビス』の上昇負荷みたいな。

キャパ夫妻の姉弟のマドックスとトレントは、リゾートホテルでできたお友達からもらった暗号文を頼りに珊瑚礁を経由して脱出する。お友達ってのがホテルの支配人っぽい人の甥で、支配人が珊瑚礁を好かないらしいことをトレントに教えた。で、珊瑚礁が鉱石の影響を中和するんじゃないかというトレントのナイス推察で脱出に成功。同じホテルに宿泊していた警官に証拠を渡して治験の関係者を根こそぎ逮捕して決着と。
なんか、岩壁の成分が原因なんじゃないかっていう推察とか、30分で1年分の時間が身体に流れるっていう計算が速かったことも含めてみんな賢いとこ地味に好き。


ホテルの看板の「ANA」の部分以外が植木で隠れてたのって何か意味あったのかな。皆目見当もつかんな。


あとなんで妙に職業を気にしてたんだろう。トレントとお友達が普通の方のビーチで大人たちに名前と職業を訊いて周ってたり、大人たちも補足情報でわざわざ職業を言ってたり。宿泊客の警官に治験と称する人体実験のことをばらす伏線にしては少々やりすぎだと思うし。
ガイ・キャパがやたら死因に詳しいことについて保険会社で統計を扱ってることを言ったり、チャールズだったかとジャリンだったかが外科医と看護師だと名乗ったのは状況的にわかる。プリスカが博物館の学芸員だという情報とか、パトリシアだっけ?の仲違い中のお姉さんがセラピストだという情報はそんなに必要だったように思えない。
情報自体に意味がないとしたら、情報を明かしたこと自体に意味があるのかな。

occupationのダブルミーニングなんてあり得るだろうかって思ってみたけど、weblioで意味を調べてみても
「職業, 業務, (楽しみまたは日常生活の一部としての)時間の費やし方, 気晴らし, 従業, (土地・家屋などの)占有, 居住, (地位・職などの)保有, 占有期間, 占領」
で、まあそうですよねってかんじ。言葉の選び方には特に意図とかないのかな。

ニューヨークのトライベッカ映画祭のトークイベントでシャマランが語ったという内容が映画.comの記事に出てたけど、関係してるんだろうか。父の存在に影響を受けたと語っている。
曰く、両親・叔父・叔母と、親戚14人がなんと医者で、シャマラン自身もニューヨーク大学では高成績を修めていて、医者になることを期待されていたそう。でもスパイク・リーの本や映画に触発されて芸術学部に進むことを決めて、父を落胆させたんだとか。
本作の製作に関してあえてこの話をした辺り、職業というものについて何か意識するところがあったんだろうなと想像する。プリスカが、自分が冷静でいられるのは博物館学芸員だからだ、みたいなこと言ってるところなかったっけか。全然関係なさそうなこと言ってるし、学を修めなきゃ就けない職に就いてる人間がエラでしょみたいなノリでやってたのかなあと思ったり。「医局長に上り詰めたんだ!奪われてたまるか!」みたいなことを喚いてたチャールズもそんなノリだったんじゃないかな。


そのチャールズって、部分的にシャマランの父が重ねられてたんだろうか。
シャマランの父は認知症になったんだそう。「まるで駅を往来するように記憶が訪れては消えている」とのこと。そのものズバリってかんじの症状でもないけど、脈略なくある映画のことを思い出したり、妄想に取り憑かれてミッドサイズ・セダンやらガイに襲いかかったりっていうのは認知症っぽさあるなあと思う。作中では精神疾患だったけど。

ちなみにジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドが出てる映画って『ミズーリ・ブレイク』のことだろうか。お父さんが好きだったとかかな。1976年ってシャマランが6歳くらいの頃だから、お父さんは当時30代くらいだろうか。


父が痴呆症で記憶が混濁していく一方、シャマランのご子息たちは立派に成長していってる。シャマランは「瞬きをしたら、全てが変わってしまった感覚」と形容していた。そんな感覚を本作で描いたんだそう。

そんなこと言われると一気にすごく身近に感じるようになるなあ。いつか10コ前後くらい下の従弟に延々と小児向けの乗り物図鑑の解説を求められたことがあったけど、いつの間にか高校出て就職してた。同年代の親戚は別にトーマシン・マッケンジーではないにせよ立派なレディになってた。両親は見るたびに老けてく。時間速い。


まあぶっちゃけ何より印象に残ってるとこは、テントからトレントと妊娠5ヶ月相当のカーラが手を繋いで出てきたとこ。なんかめっちゃぞわっとした。
じゅ

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