雷電五郎

オールドの雷電五郎のレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.5
特殊な鉱石による磁場の発生で時間経過の速度が狂ったビーチに閉じ込められてしまうホラーよりのサスペンスです。

一晩で実に50年の時間が経過してしまうという、パッと見分かりにくいものの生きとし生ける者にとってはこの上なく残酷な設定でぞくっとしました。
ホテルでの少年達の出会いと友情が救いのきっかけになっているのがよかったです。あの出会いと少年の暗号手紙がなければ姉弟は脱出することすら諦めざるをえなかったと思うので。

場を引っ掻き回すトラブルメイカーはいますが、さほどストレスもなく逆にとってつけた感があったのは難点でした。
グロい描写はありませんが、主人公の姉弟が11歳6歳から一晩で61歳と56歳……あまりにも残酷すぎて怖い以前に二人と両親の失われた時間を思うと悲しい気持ちにもなってしまう作品です。

つっこみどころはあれど設定や理由づけもちゃんとしてて好きでした。治験の時短のためというのは少し悪意を感じる設定ではありますが。シャマラン監督がいつになく出番が多いですね(笑)

急速に歳をとるとは言え、大人は徐々に進み老化が明確に可視化されるのに時間がかかるので子供との対比が余計にエグいです。
下手にグロい描写あるよりよっぽど残酷な設定で自分があの状況に置かれたらと思うと気が狂いそうですね。時間は不可逆であり失われた経過は決して戻りません。失われた50年で人間がどれだけのことを経験できるか考えた時に、その経験がすべて取り上げられ最盛期を過ぎた肉体だけが残されることが人生にとっていかに残忍な仕打ちではないでしょうか。
人間にとって最も恐ろしい設定ではありました。
雷電五郎

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