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ヘルムート・ニュートンと12人の女たちのmのレビュー・感想・評価

4.0
写真集を持つファンにとっては堪らない一作品。圧倒的なセンスと人柄の良さを見ることが出来て恍惚としてしまった。

ヘルムート・ニュートンさんの作品のファンなので、観たいと願っていた。彼の写真集は二冊持っている。
だから好きな写真の裏側を聞けて、ましてや見れるのなんて、ホント至福でしかなかった。とくにボツ作品、発表された作品ではない写真のネガを見れたのは貴重過ぎて穴が開くほど見入ってしまった。

ヘルムート・ニュートンさんのファンではあるが、彼自身を深く知ることはなかったので今回、インタビューという形と撮影風景を見れてホント感激した。
作品と同じように過激な人かと思ったら、全然違くてお茶目で可愛らしく、そして写真への情熱を絶やさない。

顕著だったのが、TV番組で「あなたの写真は女性蔑視」と言われたときのこと。あのシーンに彼の優しさが詰まっていた。おまえはなにも分かっていないと罵倒してきた女性に怒ることも出来ただろうに、少し圧倒され、自身の言いたいことを言えなそうにしていた。
凄く冷静に、けれども言葉を選んでいたのが印象深い。
自身の撮りたいものが女性蔑視に見える、というのはヘルムートさん自身理解していたのではないだろうか。けれども、撮りたいものはこれなんだ!という確固たる信念も同時に持ち合わせている。そんな気がしてならなかった。

過激なもの、性的なものを創り出す人間は昔も今の世も多い。売れるからね。
信念と愛が無く、名を馳せたい、注目されたいなどそういった下心があれば途端にゲテモノになってしまうだろう。
ヘルムート・ニュートンさんに撮られる女性たちは、カメラ越しに彼の深い信念を感じていた。それを今回リアルに語ってくれて、知れてよかった。

また妻との絆も素敵だった。病室でのやり取り、事故後最後の写真。すべて愛に溢れていた。トレンチコートの写真のエピソードもお茶目で好き。ホントに両者共、両者に愛されていたのが分かる。

写真集を持っていて不思議だったんだけど、彼の写真は陰毛の形が決まっているのよね。それについても触れられていて、納得してしまった笑

『メットガラ ドレスをまとった美術館』でカール・ラガーフェルドさんが、自身をアーティストではない、服はアートではないと言っていて、ヘルムート・ニュートンさんも今作でそんなことを言っていた。
これについて興味深い。もう少しいろんなドキュメンタリー観たいと思う。

彼の撮るシャーロット・ランプリングさんは絶品だぞ!
そして、ヒールを皮肉った車椅子の写真や脚を補強した写真も大好き。
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