くりふ

ヘルムート・ニュートンと12人の女たちのくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【レンズの盾】

アマプラにあったので、いい機会だなと。気になってはいたが、劇場行こうとまでは思わなかったので。

この人の写真には、昔触れた時は、あまり惹かれなかった。徹底して表皮やスタイルに拘っていると感じ、しかしその世界に入りたいと思えなくて。というか、入る余地がなかった気がする。…当時は。

写真は実物と向き合わないと良さはわからないので、この映画の紹介ではやっぱりわからない。映画としても並に感じた。が、へえー!と興味深かった箇所は、幾つもありました。

一番、目からウロコだったのが、レニ・リーフェンシュタールの影響を公言していること。

なるほど、多感な時期にナチスが傍にあり、そこでレニが映像で彫り上げた、白人の肉体美に衝撃を受けたなら、ああいう写真を撮りたがるのはホント納得。本作イチの収穫でした。

あとは、女性への“君が好きだ、チクショウ”というアンビバレンツな視線。この、被写体でもあったイザベラ・ロッセリーニの談話が深くおもしろい。多かれ少なかれ、男性は女性に、こういう感情を抱くものだろうけれど。特に、美女といい仲になったりすると 笑

彼女の“被写体の女性より、自分の感情を語っていた”というコメントにも感心。ヘルちゃん本人が、レンズが盾として、現実から自分を守る…と語っており、通じるものがあります。

実物の写真を見たくなったのは、長年の共闘者でもあった、奥さんとのプライベートを剥き出しに撮った写真群。展覧会も開いたのですね。仕事で撮ったものとはまるでベクトルが違い、ヒト、らしくて惹かれる。実生活の場で、ホントに裸エプロンやってたりするし 笑

登場する女性は皆、面白い実績を重ねた人だから、皆、言うことがオモシロイ!

やっぱり噛みごたえあるのはイザベラさんかなあ。『ブルーベルベット』のあの役ができたから、ヘルちゃんモデルをやりながら、冷静な洞察ができたのかな?と思った。

あと、グレイス・ジョーンズの、あまりにざっくりなオバチャンぶりが、微笑ましい!

とはいえ、私にとっては本作を見ても、ヘルムート・ニュートンという写真家はへえー!止まりでした。

いつか、写真そのものと改めて、向き合いたいと思います。

<2023.4.5記>
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