けーすけ

記憶の技法のけーすけのレビュー・感想・評価

記憶の技法(2020年製作の映画)
4.1
2020/11/22(日) cocoの特別オンライン試写で鑑賞。https://coco.to/ 原作は漫画のようですが未読。

東京に住む女子高校生の鹿角華蓮(かづの・かれん)は、時折起こる幼い頃の記憶が断片的にフラッシュバックして意識が飛ぶ症状に悩まされていた。ある日、華蓮は韓国への修学旅行に必要なパスポートを作る際、戸籍に“由”という人物がにが存在し、自身が養子だった事を知る。
由とは誰なのか?そして自身が思い出せない幼少期に何があったのか知りたくなった華蓮は、青い瞳を持つ大人びた雰囲気の同級生、穂刈怜(ほがり・さとい)に協力をしてもらい、出生の地である福岡に調べに行く事にした。そこで明らかになっていく過去とは一体・・・










ちょいちょい気になってしまう部分はあったものの、鑑賞後すぐに2周目鑑賞をしてしまったくらいで、個人的に傑作!


女子高生と同級生の男の子が福岡へ旅行、、、「それなんて“キミスイ”?」とか思ってしまい、あまり期待はしていなかったのですが、徐々に真実にたどり着くミステリー・サスペンス的要素も含めつつ、事実が分かった後にもさらにひと捻りの真実があって、期待値を上回りかなり面白かったです。

男女二人が数日間行動を共にする設定ながら恋愛的な要素は無く、華蓮の過去を探る旅を中心に描かれていたのも好印象。仮に僕があんな女の子と一緒にいたとしたら間違いなくガマンできない…(ゲス)。




雨やシャワー、水滴といった水の音、ソファごしに見えるTV、金魚といったものが、フラッシュバックする断片的な記憶の中の出来事への伏線となっていて、また随所での赤い色使いがこの映画全体を象徴しており、恐ろしくもあり美しかったです。


あと印象に残ったのが記憶についての解釈の話。人間は忘れる生き物だけど、実は記憶の根幹としては存在しているものの思い出せないのは脳内で検索に失敗しているから、という考え方。適切な検索の手がかりが見つからないため、記憶内の情報にアクセスできないことによるという説。

劇中では華蓮は本能的防御によって過去の記憶へのアクセスを遮断している感じだけど、本人は真実を知りたい。かたや手伝う事になった怜は、自身の瞳の色や家族関係などの出来事が強烈で、忘れたいけど忘れられないという対比が面白かったです。ただ怜の過去の話はちょっとあっさりしていたのでもう少し語ってほしかった部分。



少しマイナスな部分としては、華蓮は平成12年5月4日生まれの17歳との設定で、劇中舞台は2017年頃の話と思われます。なので華蓮が幼い頃は既に2000年代に入っており、起きた出来事の内容からしてもスマホで検索したらすぐに分かったのでは、と。
撮影、演出の都合上で仕方ないとは思うのですが、やはり気になってしまったところでした。





主演の華蓮を演じた石井杏奈。『スプリング、ハズ、カム』という映画で気になっておりましたが、本作でもかわいらしくもどこか頼りない雰囲気の女子高生役がハマっておりました。泣きの演技も引き込まれた~。

同級生・穂刈怜役の栗原吾郎。青い瞳のインパクトが強烈でなかなか慣れなかったけど、クールなキャラ設定はよかったです。しかし17歳で一人暮らしして、BARで働いている高校生って…笑

そして本作のキーパーソンとなる人物を演じた柄本時生。出番はそれほど多くないのですが、彼が感情を吐き出すシーンに泣かされました。そのシーンだけで☆0.5加算です。


あと、母親役・戸田菜穂の感情の機微が印象的だったのと、お父さん役の小市慢太郎の笑顔がとても素敵でした。




漫画原作っぽい都合よい感じは多々ありますが、それでもどのような結末となるのかドキドキできましたし、ラストシーンの華蓮と怜の締めくくりカットも良きでした。

みんなにおススメしたいのに上映館少なすぎぃ!涙


[2020-173]
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