ほろ苦い父と娘の物語。
自分の命が尽きかける瞬間、見えてくることがある。
その燃え尽きようとする命を見つめるうち、思い出すことがある。
父と娘はどうしてこうもうまくいかないのか。
男手一つ、懸命に娘の面倒を見よう、歩み寄ろうとする父。
ただそばにいてほしい、抱きしめてほしい、頭を撫でてほしい娘。
タイミングが合わない。すれ違いばかり。
娘を思いやる父。かまってほしい娘。
そうして、鳥の巣に巻かれるように、自分の世界に閉じこもる娘。
都会への上京際?娘の口紅を使って、自分の両頬に紅を描く父。
「お父さんは寂しくないよ、行っておいで」父なりのエール。でも、届かない。
俯く娘の目線には、もう父はいない。
こんなに分かり合えないものなのかと、こみあげる涙。
静かに、父がいなくなった病院のベッドに無言で伏せる娘。ああ……
思い出す、鳥の思い出。思い出の仮面。走り出す娘。
ずっと欲しかった、ハグ。
2人を隔てていたモノが、2人を繋ぐ。
誰かを思いやり、その胸に飛び込むのに、遅すぎることはないのかもしれない。
抱きしめれば、抱きしめ返してくれるかもしれない。
大人になれば、子どもの頃見えなかった景色も、思いも、見えてくるかもしれないから。
ショートフィルムフェスティバル2020
チェコ🇨🇿