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デニス・ホー ビカミング・ザ・ソングのTeijijiのレビュー・感想・評価

4.4
最初から最後までウルウルしっぱなしですよ。

ヌルい日本で生まれ育ちずっと暮らしている私にもデニス・ホー、彼女の覚悟がズンズンと伝わってくる。

クレバーな両親のもとで育ち、カナダのモントリオールでリベラルな教育を受け人格を形成できた事で、その後の彼女は人生を形作られたのだろう。
その後、生まれ故郷の香港に戻り、師事することになるポップスターのアニタ・ムイの影響や自身がLGBTである事をカミングアウトしたりする過程で、徐々に香港人としてのアイデンティティが確立されていく。

歴史に翻弄されながらも独立心に富、独自の文化を成熟させてきた香港だが、英国から中国に返還された時点で多くの香港人は危機を感じていた。
中国共産党は誰がなんと言おうとあらゆるものを完全に手中に納めなければ気が済まないのだ。

香港の独自性を認めてしまえば、次はウイグル地区、チベット、台湾そして多くの少数民族も黙っていないだろう。
中国だけで無く他の大国の思惑も見え隠れし、いつだって犠牲になるのは市民だ。

この映画が作られた時よりも僅か1年足らずのうちに香港の民主化情勢はより厳しくなっている。
本来なら自分たちを守ってくれるはずの政府や官憲に攻撃されながらも最前線に立ち続ける彼女の姿には本当に感銘を受けた。

個の力は微細かもしれないけど、諦めてしまったらそこで終わってしまう。
それがわかっているデニス・ホーの覚悟を世界中の人に観てもらいたい。
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