20年くらい前に香港芸能のオタクしてました。当時の何韻詩(デニス・ホー)はまだ数多の若手スターの1人だった。当時は結婚と出産を経たフェイ・ウォンが日本進出を試み、香港ではサミー・チェンやケリー・チャン、TWINSが人気だったのかな。台湾のジェイ・チョウが中華圏で爆発的に売れてた記憶。
卓越した歌唱力とライブパフォーマンスで香港を代表するスターに登りつめたデニス・ホー。敬愛する梅艶芳(アニタ・ムイ)の死を乗り越え、同性愛者であることをカミングアウトし、香港の民主化運動を支持する彼女の半生、特に民主化運動に関わり始めてからを描いたドキュメンタリー。
民主化運動に関わったことで大陸からは締め出された。収入の90%を失ったと語っていた。中国では彼女の存在自体がタブーらしい。
先日も香港で開催予定だったライブが公演1週間前に当局の介入で中止となった。配信ライブは決行されたものの、会場が特定されないよう配慮されたらしい。
彼女の盟友である黄耀明(アンソニー・ウォン)も8月に「3年前に民主派の議員の決起集会で歌を歌ったため」逮捕された。蘋果日報は資産凍結の末休刊に追い込まれ、周庭は刑期を終えたがSNSは更新されない。
じわじわと自由と行動を制限し見せしめ的に懲罰を与え服従を迫る大陸の狡猾さ…そういえば雨傘運動でもヒートアップしてる頃はいなし、モチベーションが下がった頃に逮捕していた。手馴れている感…
圧倒的に不利な戦いに挑む彼らは、まるで大陸という名のサノスに立ち向かうアベンジャーズのよう。
どんなに追い詰められても、彼女は自分に正直に誠実に生きている。それは多感な時期をカナダで過ごしたことも影響してるのだろうか。当たり前のように自由も選択権もある場所で。育ったケベックは独立住民投票が行われた自治体でもある。
そして「黙っていても何も変わらない」同性愛者が自分の権利に敏感になるのは当然のことだし、彼らを揶揄して蔑む人たちはいかに何も労せずにその権利を得られているか省みてほしい…
一番絶望したのは民主派に肩入れした何韻詩のスタジアムライブのスポンサーだったランコムが、中国市場への影響を憂慮しスポンサーを降りたこと。人道的な公正な判断をすべき欧米の企業が、中国の経済力に忖度し保護するべき人たちを見捨てているのはあまりにもグロい…。何韻詩がスピーチした国連にも、大陸の息がかかった重鎮はどれだけいるだろう。気づけば憧れのアニタより長く生きていた彼女の戦いはいつまで続くだろうか。レスリー・チャンが最後にコラボレーションした黄耀明も来年60歳となる。ずっと穏やかな香港耽美派だった彼が大陸に目を付けられるようになるとは、追っていた当時思いもよらなかったけど、誠実な人を推してた自分の目を褒めたい。
しかし私たち日本人も、中国人のインバウンドに散々恩恵を受けようとしてきた。芸能人はこぞってWeiboのアカウントを登録し、日本人ファンも人民元でシバくような景気のいい中国人の推し活をエンタメとして享受してきた。その景気の良さの足元に香港や台湾、チベット、ウィグルがあることを忘れてはいけないな…。
滑り込みですが見れてよかったです。