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無聲 The Silent Forestのbibooのネタバレレビュー・内容・結末

無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

BGMを入れないタイミングが秀悦。ろう者のサイレントな世界を体感させているだけではなくて、観客の呼吸を止めたり緊張感をうまく増幅させている。ラストシーンの予想つかなさが一番怖かった。
「無聲」というタイトルで、女性が主人公というところから、見る前からもしやという感じで題材に予測はついていたけど、俳優たちの素晴らしい演技と、短時間の中で芋づる式に出てくる事実に目が離せなかった。生徒役の俳優陣は本当にろう者かと思うほど素晴らしい演技だった。
ろう者の性被害というのは定期的に聞く話で、物理的にも力が弱いかつ声を発せないから狙われることが多いのが心底腹ただしく気持ち悪い。序盤で校長先生が言っていた「性被害者の汚名をきせたいの?」というセリフ、被害を受けた人に対して”汚名”という言葉は果たして適切なのかとか、そこから考えてしまう。
生徒内での加害者のリーダーであったユングアンには、申し訳ないけど同情はできないけど、彼の環境を理解することは少しできる。やっぱり加害者と言われる人は突然変異ではなくて、脈々と受け継がれる加害の下に起きた行動であることが多い。美術の先生に対する気持ちは恋とか執着で簡単に片付けられなく、ユングアンの家庭環境の不足も関わってくる話な気もしている。ユングアンのグループの男子たちもなぜ積極的に加担してたのか、逆らえないほどのユングアンの力とはなんだったのか、心境が気になるし、被害を訴えても取り合ってくれなかった寮の先生も知ってて自分の立場を守るために突き離したのか、単純に頭ごなしに信じなかったのかそこらへんも語りがやや足りないように感じた。観客を惹きつける構成や、中国映画ならではの色彩の美しさ、考え込むべきテーマなどは良かったけど、尺が短いゆえに背景の掘り下げに物足りなさを少し感じた。
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