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無聲 The Silent Forestのharuのレビュー・感想・評価

無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)
3.5
終わりなき負の連鎖。

聴覚障がいを持つチャンは、聾学校に転校し、ベイベイという女の子と仲良くなる。ところが楽しかったのも束の間、帰りのバスの中で、ベイベイが男子生徒たちから暴行を受けているところを目撃し、ショックを受けるチャン。しかも翌日ベイベイはその男子生徒たちと仲良くサッカーをしていて…

台湾の聾学校で実際に起きた事件の映画化。壮絶すぎて言葉が出ない。この学校ではベイベイだけでなく、他にも多くの生徒たちが被害に遭っており、その数127件。当然学校側は把握していたが、校長や教師たちにより長く隠蔽されていた。
大人が何もしてくれないのなら、逃げれば良い。ところがチャンもベイベイも、こんな目にあっても転校は絶対したくないと言う。健常者がいる外の世界で感じる孤独に比べたら、こっちの方がマシだなんて、彼らにとって、社会はどれほど地獄なんだろう。障がいがある人たちにとっては、外の世界にはベイベイが最初に被害を訴えた教師みたいのしかいないのだろうか。彼らは「嫌なことは、ちゃんと嫌だと言いなさい」とかクソみたいなことしか言わないし、アベンジャーズは現実にはいない。外の世界に、ベイベイたちが逃げられる場所はどこにもない。
最終的に事件は明るみに出たものの、結局何も解決していない。それどころか負の連鎖は続いていくような暗示。被害者たちの心のケアはもちろんですが、彼らにとって社会が「逃げ場」となるよう、私たちからアプローチすべきと思いました。
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