大道幸之丞

無聲 The Silent Forestの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ほぼ実話のショッキングな台湾作品。

我々は聾唖など障害を持つ者たちはそれ故、障害者同士は誰しも仲良く平和を求めるものと勝手に思い込んでいる気がする。

しかし日本でも近年障害者施設での残虐な事件やいじめの実態が次々と発覚している。この手の施設は総じて経営は厳しく、それ故に事件が発覚する事で援助施策を打ち切られてしまう事をおそれ、事実をひた隠しにする傾向がある。

本作品もいじめがエスカレートして日常的にほぼ毎日公然とレイプ行為が行われていたというおぞましい物語だ。

健常者の学校に行けば疎外感がある、がために多少の嫌な面に目を瞑って障害者学校を選ぶ生徒たちの「究極の選択のような苦悩」を表現している。

声が出せないので誰にも助けを求める事が出来ない恐怖もある。

一番の性被害者のベイベイはレイプ行為を回避出来ないのであれば、妊娠の危険を回避するためにと避妊手術さえ受けようとする。

しかしその主犯格自身も実は美術教師から性被害を受けており、その影響で、行為に及んでいた事実が明るみになる。事実なので仕方がないが、ここは物語としては「陳腐」に感じた。

唯一まともな教師が生徒を結局救うが、経営を優先に考えて学校の存在意義という「土台」を忘れている校長の姿勢は人種や国に関わらず人間の陥りやすい一面でもある。

物語を追いながら自らも彼らと同じ境遇のような気にさせられ、当事者意識に苛まれる——そんな作品だ。日本より性に保守的な台湾であれば相当社会的インパクトがあったであろうことは想像に難くない。