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無聲 The Silent Forestのunkoのレビュー・感想・評価

無聲 The Silent Forest(2020年製作の映画)
4.2
國立臺南大學附屬啟聰學校にて、2011年に発覚した集団性的暴行事件を元にかなり沿った形で映像化。
台南市にある聾生徒を対象とした特別支援学校。幼児学部と小学校学部があり、別キャンパスには中学校と高等専門学校もある。
通常学校から聾学校に転校してきた主人公チャン・チェン(リウ・ツーチュアン)はある日スクールバス内で後部座席に謎の垂れ幕が掛かっていることに気づく。中を覗くと性的暴行が行われていた。
信頼がおける先生に相談する主人公。本格的に聞き込み調査を行うと…。

非常に重い作品でした。
基本的にろう者の生徒の多くは日常生活から親や周りに迷惑をかけているという意識があり、性的被害を告白するのも引け目に思っている。かつ手話を理解できる近くの人がおらず現状を打破できない。親に伝わると過保護に閉じ込められるか、転校を余儀なくされる。口語なら詳細に説明できるが手話で感情を機微に説明できない。そのようなジレンマが複数年に渡る大事件の土壌になっている。

学校側が被害を知りながら隠蔽し続けたが故に被害者が爆増し、加害者も昔被害者だったという負のループに。過去被害者だったことを盾に暴行が日常に紛れ込んでしまう。
本来防止すべき学校側の対応も酷いもので、裁判の証人として呼ばれた教師はその後年次評価を下げられ、排除するという陰湿っぷり。
もうこうなると隠蔽という生易しいものでもない。
性被害現場で助けを求める声を上げることもできない、手話が何の役にもたたない無常さ。

元の事件を知らずに観て、被害全貌の驚きを味わう。
その後事件を調べ映画では詳細に描かれていない学校側の醜悪さを理解する。
この映画だけではなく事件を通して深く考えることができます。
ぜひ調べてみることをお勧めします。
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