しゅう

川っぺりムコリッタのしゅうのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
3.9
前作『彼らが本気で編むときは、』が大傑作だった荻上直子監督だが、今作の前情報や宣伝ビジュアルから伝わってくる「ほっこり奇妙な共同生活」感に、またまた偏見まみれの危惧を抱きながら劇場へ。

ぐっとシリアス寄りのファンタジー。

更生協力者が営むイカの塩辛工場で働き始めた前科者の山田(松ケン)が入居した古アパート。図々しい隣人島田(ムロツヨシ)をはじめ、どこか歪な住人達との交流から少しずつ人間性を取り戻していく山田だったが‥。

辛い過去や厳しい現実の生活を背負った人間は、日々の暮らしの中にささやかな幸せ(例えば炊き立てのご飯の美味さ等)を見つけて、それを糧に何とか生きていくしかない。

この映画での「おいしい生活」は、暮らしを豊かに彩る為のスタイルではなく、崖っぷちの人生から落っこちない為のギリギリの手段として描かれており、その切実さが痛切に感じられるのが良かった。
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