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川っぺりムコリッタのEDDIEのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
4.4
死を迎える時、悲しんでくれる人がいるか。様々な境遇の死のカタチと巡り合いながら自らの人生を問う。
序盤は口数の少ない主人公も段々と“生きる”実感を持ち周囲との交流を噛みしめる。極限状態に陥った人間の“食”への感謝を切に感じ取った。

〈感想〉
とても気になっていた映画、公開から1週間後に観てきました!
いやぁ松山ケンイチって改めて巧いって再認識させられました。
とある事情により彼は小さな町の塩辛工場で働き始め、ハイツムコリッタというアパートで暮らし始めます。
特に彼の背景については説明もなく進んでいくんですが、序盤はほとんどセリフもないのに彼の抱えた問題や背景設定が手に取るようにわかる演出がなされているんですね。
観ながら「あ、彼はきっとこういう事情なんだ」とか「こんな境遇なんだ」とか「このアパートの住人ってこんな人たちだ」とか、それが見る見るうちに想像させられます。

絶妙なタイミングで介入してくるムロツヨシも流石でした。最初は図々しくて気味悪い人だなって感じるんですけど、不思議なもので映画が終わる頃には好きになってるんですよね。

僕らが日常生活でも出会う「なんか性格悪そうな人」とか「無愛想な人」とか、それもすべてこちらの型にはめて性格判断してるだけだったりします。
そういえば最近見終わったドラマ『名建築で昼食を 大阪編』の最終回でも同じような話が展開されていました。

自分の物差しで他人を測るのはなんだかもったいない。
松山ケンイチ演じる山田が抱える問題や近隣に住む人たちの問題や性格、それらってマイナスに見てた場合、取り越し苦労だったってこともあります。
分かり合えて、最終的に自分が死ぬ時なんかに悲しんでくれる1人になってくれたらどれほど幸せなことでしょう。

ちなみに僕が映画を観る際に着目しているポイントの一つ“食事シーンに卵が使われている”こと。
本作でもすき焼きを食べるシーンに卵が登場します。そこで卵が使われる意味合い、食事シーンの重要性なんかも妄想しながら考察するとより楽しめます。

〈キャスト〉
山田たけし(松山ケンイチ)
島田幸三(ムロツヨシ)
南詩織(満島ひかり)
中島(江口のりこ)
坊主(黒田大輔)
大橋(田中美佐子)
堤下靖男(柄本佑)
沢田(緒方直人)
溝口健一(吉岡秀隆)

※2022年新作映画124本目
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