ぶみ

川っぺりムコリッタのぶみのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
3.5
心をほぐす、幸せがある。

荻上直子が上梓した同名小説を、荻上自らが監督、脚本、松山ケンイチ主演により映像化したドラマ。
ハイツムコリッタに入居した青年と、そこに住む人々との交流を描く。
主人公となる塩辛工場に勤める青年を松山、ムコリッタに住む人々として、隣の住人をムロツヨシ、大家を満島ひかり、墓石販売をして息子と二人で暮らしている男性を吉岡秀隆が演じているほか、緒形直人、笹野高史、柄本佑、田中美佐子、江口のりこ等が登場。
また、エンドロールに薬師丸ひろ子の文字があったものの、出演シーンが思い浮かばず、後で調べたところ、電話の声で登場していた模様。
物語は、富山を舞台にハイツムコリッタで暮らす人々の日常を描いていくが、舞台となるアパートが四軒長屋が建ち並ぶスタイルとなっており、雰囲気抜群。
冒頭、松山演じる山田のところに、ムロツヨシ演じる、自称ミニマリストの島田が押しかけて行き、その後も二人のやりとりが中心となるのだが、その掛け合いが面白く、ここだけでも見どころ十分。
他の住人も、明らかに一癖も二癖もあるようなメンバーばかりではあるものの、その生活ぶりは人間味溢れるもの。
しかし、皆何らかの過去を引きずっており、それを台詞ではなく、行間で読ませつつ表現しているのは俳優陣の演技力の賜物。
そして、全体的にはコメディ調の明るい展開となっており、一部ファンタジーな演出もあるが、描かれているテーマは生と死を絡めた再生の物語であり、思いのほか重いテーマに、心を撃ち抜かれることに。
遠くにアルプスを臨み、富山地方鉄道が走る光景を舞台として繰り広げられる人間ドラマに癒されるとともに、炊き立ての白いご飯を食べるといった、日常にある幸せを噛み締めたいと思わせてくれる一作。

クーラー拾ってよ。
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