ゆき

川っぺりムコリッタのゆきのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
4.2
生きる術

形は無くとも、会いたい人がいる。
無骨だけど温かい関係性の組み立て、徐々に豊かになっていく食卓と表情の変化がすごく印象的。
全員が“誰か”への背徳心を抱いて過ごす。でも余計なことは言わないで笑う。
家族ではない、居心地のいい場所。川っぺりの人たちまで、ご近所で想い合う関係。
それぞれのキャラクターが「他人に見せない部分」の描き方が丁寧で好き。
幸せになる権利ってなんだろう。
粉々になっても、元は人。弔いの形はそれぞれだった。
孤独と対峙することは避けられないけれど、自分亡き時に寂しいと思ってくれる人がいるありがたみを痛感する。
山ちゃんの「父でした」というフレーズがすごくぐっと来た。
島田さんの表情の不安定さや、南さんの逞しさ、溝口さん親子の違和感、すべてが見事にマッチしてる。工場の人たちも、市役所の人もいい塩梅だ。
まさに、キャスティングの妙。
野良猫らしい、野良猫が登場するあたりもいじらしい。
じんわりと気持ちが弛んでいく感覚の120分でした。
ラストシーンの爽快感も然り、哀愁のある子役が出る作品は大体好き。笑
「真心込めてサービスします。」
***
小さな町に越してきた山田。働き口だけ決まっていた彼は社長の紹介で築50年のハイツムコリッタに入居する。風呂上がりの冷えた牛乳と炊き立てのお米を楽しみにしている山田の元に隣人・島田がある頼みをしに来た。その日以来、ひっそりと暮らしたい山田の生活は変わり始める。
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