コンドー

Malu 夢路のコンドーのレビュー・感想・評価

Malu 夢路(2019年製作の映画)
3.8
死と向き合いながら生きることとは。

妹・ランは、幼かった自分を含めて心中を図ろうとした母親を見捨てずに、最期まで独りで看取り続けた。一方で、姉・ホンは、心中未遂後は祖母に引き取られて、芸術の英才教育を受けながら育った。

母の死後、二人は再会し、ホンはランの人生を「哀れ」と罵った。…幼い頃からずっと死と向き合い続けたランの人生を、「哀れ」という言葉で片付けられるのだろうか。

その後、新たな人生を求めてマレーシアから日本へ飛び出してきたランは、一見すると生気が宿っていそうだが、実際には自我を喪失しているように見えた。語弊があるかもしれないが、マレーシアで母と暮らしているときのほうが切実に生きていると感じられた。

日本でも、ホンからの「哀れ」という言葉を意識しているシーンがあったことから、ランは相当傷ついたのだと思う。その一方で、日本の住宅街のなかに墓地があることに関心を抱いたのも、日常のなかに死を意識する彼女ならではだと感じた。

タイトルの「Malu」は仏教用語を語源とするマレー語であり、「恥」を意味するらしい。これは死と向き合い、生を渇望するランに対する「恥」ではなく、死に忌避感を抱きがちな世の中に対する「恥」ではないだろうか。

(感想とは関係ないけど、みかんを剥く「メリメリッ」とした効果音に違和感を覚えた)