ほーりー

脱出のほーりーのレビュー・感想・評価

脱出(1944年製作の映画)
3.7
『脱出』は不思議な映画だ。

いよいよこれから本当の脱出という時に、物語は呆気なく幕を閉じてしまう。

ホーギー・カーマイケルのピアノに合わせて、肩をクネクネしながら歩くローレン・バコールの姿(撮影当時なんと19才だったとはとても思えない)に思わずポカンとしてしまった。

本作はハワード・ホークス監督によるフィルム・ノワール?……サスペンス?……ロマンス?……冒険もの?……コメディ?……ジャンルはよくわからないがとにかく映画史に残る傑作なのだ。

友人である文豪ヘミングウェイを掴まえてホークスが「お前の原作で一番の駄作でも俺は映画化できるぞ」と言って作ったのが本作だという。

映画化するにあたってこれまた文豪ウィリアム・フォークナーが脚色に加わり、かなり原作をアレンジして出来たのだそうな。

他のレビュワーも言及しているが、かなり『カサブランカ』を意識したストーリーになっているが、『カサブランカ』のようなプロパガンダ色も皆無。

ヴィシー政権時代、南米のフランス領の島が舞台。

観光客向けの釣り船を経営しているハンフリー・ボガートと相棒のウォルター・ブレナンはホテルで流れ者のスリのアメリカ娘(演:バコール)と出会う。

このミステリアスでタフな娘にボギーも一目惚れする。折しもフランス奪還を目指すレジスタンスからボガートは要人輸送の仕事を頼まれる。

危険な仕事だが高額の礼金を貰って彼女をアメリカに帰そうと考えたボガートは依頼を承諾する。

内容については有って無いようなもので、事実、DVDの特典メイキングでは内容に触れず、ほとんどボギーとバコールのビッグカップル誕生秘話についてだった。

理想的なタフガイ(ボギー)と理想的なファム・ファタール(バコール)と理想的な酔っぱらい親父(ブレナン)を配して観る者を魅力させ、作品のクオリティを高めたように思う。

ちなみにバコールが劇中披露する歌はまだ十代だったアンディ・ウィリアムズの吹替えという伝説がある。

バコールがダメだったときの要員として声はかけられたものの、結局アンディ・ウィリアムズの声を使ったのかどうかは不明だという。

■映画 DATA==========================
監督:ハワード・ホークス
脚本:ジュールス・ファースマン/ウィリアム・フォークナーほか
製作:ハワード・ホークス
音楽:ウィリアム・レイヴァ/フランツ・ワックスマン
撮影:シド・ヒコックス
公開:1944年10月11日(米)/1947年11月11日(日)
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